子どもには、いつから生成AIを使わせ始める?

小さなお子さんのいるクライアントから、題名のような質問を、雑談的に相談される機会がありました。
同様の話として、過去にも、技術革新に伴い、社会構造が大きく変化する際に、歴代の親御さんが不安を感じ、悩んだテーマだと思います。
- 子ども教育×テレビ
- 子ども教育×ビデオゲーム
- 子ども教育×スマホ
- 子ども教育×生成AI
ただし、生成AIの登場は、過去の革新技術と比較しても、社会に対する影響が広範囲、かつ、深いため、親としてどう向き合うのが適切なのか、困惑されているのではないでしょうか?
私は、正直、教育学の知見はないのですが、ITコンサルタントではあり、弊社の事業として「IT教育」も掲げているので、ちょっと真面目に、子ども教育×生成AIというテーマについて考えてみました。
なお、この記事に関する免責事項は、末尾に掲載されているリンク先に記載されていますので、ご確認ください。
問いに対する答え
先に結論だけ。
Question: 子どもには、いつから生成AIを使わせ始めるのが適切?
Answer: 「考える主体が子ども自身である」条件を満たしたら、自由に使わせて構わない。それまでは、考える主体性を持つ大人と一緒に使う。子どもの成長を願うなら、生成AIに触れさせつつ、伴走者として考える主体性の獲得を促すのがよい。(個人的意見)
子ども教育の原則
本題に入る前に、話の前提となる子ども教育における原則をまとめておきます。
- 原則①:子どもの学びを支えるのは「信頼できる大人」
- 親でなくてもよい(親に限らない)
- 1人でなくてもよい(複数人の支援者が機能しうる)
- ただし、子どもとの関係の質(安全感・一貫性)が重要で、誰でも良いわけではない
- 原則②:「自立=孤立」ではない
- 助けを使うことは能力の一部
- 支援制度を利用できる人こそ自立している
原則①は、古くからある教育理論「Attachment Theory」では、子どもは不安や困難に直面したとき、安心して戻れる“安全地帯”となる大人がいることで、探索や挑戦(学び)に向かいやすくなると整理されます。重要なのは血縁というより、子どものサインに対して敏感に応答し、予測可能で、一貫して安全を提供する関係である点です。
また、子どもは特定の大人“ひとりだけ”にしか結びつけないわけではなく、状況によっては複数の大人との安定した関係が支えになることがあります。
ただし、誰でも良いという訳ではなく、支援者が複数いたり、交代があり得る場合でも、子ども側から見た安全感と一貫性(約束・ルール・尊重のされ方)が維持されることが前提です。
また、Resilience Research、Trauma-Informed Care(これらは、不利な状況下に置かれた子どもの回復について扱った論文ですが)にも、しばしば、少なくとも1人以上の、信頼できる大人との関係が、子どもが環境に適応し成長できる保護因子として挙げられています。
支援の設計原則として、安全(Safety)/信頼(Trust)/選択肢(Choice)/協働(Collaboration)/エンパワメント(Empowerment)といった観点が重視されます。
原則②については、「Self-Determination Theory」に、人が内発的に動機づけられ、自律的に行動していくために、基本的心理欲求として、「自律性」「有能感」「関係性」が重要だと整理されています。ここでいう自律性は「他者から独立して一人でやること」ではなく、自分の理由や価値に基づいて選択し、納得して行動することを指します。つまり、良質な関係性(安心して相談できる相手や場)は、自律性と対立するものではなく、むしろ自律性を支える条件になり得ます。
さらに、社会関係資本(Social Capital)の議論でも、個人の成果や機会は「本人の能力」だけで決まり切るのではなく、利用可能な情報・支援・制度・ネットワークへのアクセスに影響されることが論じられています。
教育設計の観点では、「支援を使えること」は甘えではなく、長期的に見れば不利を縮小し、意思決定の質を上げるスキルとして位置づけられます。
いろいろ書きましたが、学校制度やアフタースクール等は、これらの原則に基づく仕組みで、子どもが「一人で抱え込まない」ための社会的装置として機能してきました。
生成AIを扱う際も同様で、AIを「孤立の代替」にするのではなく、子どもが自分で考えつつ、必要な支援(人・制度・道具)を適切に使える状態へ導くことが本筋になるでしょう。
子どもの自己実現のための基礎能力
さて、本題に入っていきます。
まず、子どもが将来、自己実現(自分らしく理想とする姿や目標を達成していく)のために、教育を通じて、どんなことを身に付けてほしいのか?を整理します。
以下の表は、教育を通して子どもが獲得すべき基礎能力を、大まかに、6つにカテゴライズしてまとめたものです。
これらは、家庭環境や経済状況といった「環境に依存せずに、意思決定・学習・資源獲得を行える力」であり、「自分を壊さずに考え、学び、選び、助けを使いながら生きる力」であると言えます。
子どもの基礎能力に対する生成AIの役割
次に、前項の「子どもの自己実現のための基礎能力」に対して、生成AIはどのような役割を果たすのかをまとめてみます。
このように、生成AIは、「自立を支える道具」として、知識格差を縮め、学習機会を拡張し、意思決定の質を高めるために、有益です。
ただし、これらの効果は、「考える主体が子ども自身である」前提においてのみ、得られます。この前提が満たされていない場合、生成AIは、逆に「自立を妨げる障害」となり、思考の外注化、依存、自己効力感の低下などのリスクが生じます。
「考える主体が子ども自身である」前提を満たす条件
では、「考える主体が子ども自身である」前提を満たす条件とは、何でしょう?
「考える主体が子ども自身である」ことの本質は、「意思決定の主導権が子どもにある」ことです。
何でも自分一人でできることではなく、大人やAIに頼らないことでもなく、正解を出せることでもありません。
もう少し、具体的に言語化すると、
「自分の状態・課題・目的を言語化でき、
その解決にあたり、外部資源(人・制度・AI)を、手段として選択・評価・修正しながら用いることができ、
最終的な判断と責任の所在を自分に置いている状態」
これを、前述の「子どもの自己実現のための基礎能力」の要素で分解すると、最初の3つ「①自己を保つ力」「②考える力」「③学び続ける力」の組合せとして整理できます。
なお、このブログの末尾のPDFに、Appendixとして、簡単な、「考える主体性」を計る観察ポイントのリストを付けていますので、活用してみてください。
子どもの年代別能力目標の目安と生成AI利用
という訳で、[Q] 子どもには、いつから生成AIを使わせ始めるのが適切?に対して、[A] 考える主体が子ども自身である」条件を満たしたら、自由に使わせて構わない、になります。
大切なのは、年齢の問題ではなく、前述の「考える主体が子ども自身である」前提を満たす条件を満たしてから、補助輪なしで生成AIを使わせることができる、と言う点です。
以下は、子どもの年代を、0~6歳、6~12歳、12~18歳、それ以降の段階に分け、前述した「自己実現のための基礎能力」を、段階的に獲得する過程を図示したものです。
成長や能力の獲得には、人によって早い、遅いがありますので、ここで示すのは、一般的にモデル化すると、こんな感じ…と言う例です(「大器晩成」という言葉の通り、遅いからと言って、将来を悲観することはありません)。
- 0~6歳は、主体性の土台を成形する時期として、生成AIは養育者(信頼できる大人)の支援ツールとして使えばよいでしょう
- 6~12歳は、主体性の芽を育てる時期として、生成AIは「答えを出す存在」ではなく、「考え方を一緒に学ぶ存在」と位置付けるよう、養育者(信頼できる大人)がガイドしてあげる必要があります。
- 先に自分の考えを示し、他の考え方や改善ポイントがあるかを聞く
- 生成AIの出力を鵜吞みにせず、根拠、理由、前提条件を確認し、必ず自分で評価する
- 自分の理解度を確認するための、問題やクイズを作らせる
- 12~18歳は、「考える主体が子ども自身である」前提を満たした状態として、子ども自身が生成AIをフル活用し、基礎能力の更なる伸張や、具体の実務能力の獲得に役立てられるでしょう。






